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海外でビジネスする
中国で仕事する
戦う日本人企業家のための
勇気百倍・元気の出るWEBLOG
この日本企業は、決して小さな企業ではありません。聞けば誰もが名前を知るような企業です。能力の高い中国人副総経理をうまく使い、ごく普通に、ごくまじめに経営してさえいれば、時代を先取りしたその事業はおよそ成功していたでしょう。いえ、いまの中国に大きな影響を与えていたかもしれません。
この合弁企業が滅びた理由はなんだったのでしょうか。
ひとつは、日本人総経理が、日本語のできる悪徳中国人と結託、愛人女性の野望を自身の野望と同化させ、能力ある中国人やまっとうな中国人をひたすら排除していったこと。
もうひとつは、日本本社が、現地総経理に対する管理と監視の目を怠ったこと。
総経理という立場を与えられると、勘違いしてしまう日本人は多いようです。また、たったひとりの中国人女性に社運を預けてしまう日本人も。そういった女性にとっては、日本人男性を意のままに操ることなど、赤子の手をひねるよりも簡単なのです。
ことの顛末も、過去に中国に進出した事実さえも、この日本企業はひた隠しにしています。こんなお粗末な、こんな恥ずかしい話は、まだ日本の中国ビジネスが成熟していない時代の、そして、この企業に限られたことだと、長い間私は思ってきました。ところが、どうもそうではないようです。これは、中国ビジネスにつきものの普遍的なテーマであり、人間の欲望や争いは、三国志の時代からなにも変わっていないんだな、とつくづく思います。
その日本人総経理は、約3年をほぼ中国で過ごしたにも関わらず、ひとことも中国語を話せるようにはなりませんでした。常に日本語のできる中国人と一緒ですから、必要がなかったのです。彼を取り囲む中国人たちもまた、決して彼に中国語を覚えさせようとはしませんでした。中国語を話せない日本人総経理。それこそが、彼らのターゲットだったのです。彼の見る中国、彼の見る中国人は、専ら、日本語のできる邪悪な中国人のフィルターを通してのものでした。彼自身の目で見たものなどなにもなかったのです。
北京滞在3ヶ月目に入ったある日のこと。愛人Bが日本語で私に聞きます。「あなた、中国語、わからないですよね?」。一瞬考えた後、私は、「うん、わからない」と答えておきました。
そう問う彼女の、うろたえ、怯えたような濁った目を、私は忘れないでしょう。ああ、悪巧みを考える中国人にとっては、こんな初級程度でも、中国語を理解する人間が怖いんだな・・・そう感じ取った瞬間でした。
現地愛人をつくるなら・・・ 指の数ほどつくって、決してひとりに権力を集中させず、適材適所で使い分け、使いこなし、管理し、競わせるぐらいの「色男のスキル」があれば、あるいは中国ビジネスに貢献するかもしれません。現地愛人に呑まれるのではなく、自在に操り、束ねてこその中国ビジネス力でしょう。